心臓移植の歴史

解説

1960年代初めから、スタンフォード大のシャムウェイらはイヌの心臓移植を行い、アザチオプリンを使用した免疫抑制法の研究に取り組んでいた。また1964年にミシシッピー大学病院のジェームズ・ハーディによってチンパンジーに対しても行われた。しかし、初めてヒトに対する心臓移植を行って世界に衝撃を与えたのは、南アフリカのバーナードだった。1967年12月、世界初の心臓移植手術が行われ、レシピエントは18日後に死亡した。
1968年に入ってバーナードは2度目の心臓移植を試み、患者は9か月生存した。この「成功」を受けて空前の心臓移植ブームが起こり、1968年には世界で約 100例の心臓移植が行われたが、患者はやがて拒絶反応が原因で死亡した。移植を行った外科医たちの多くは、手術の手技がすぐれていれば移植は成功すると考えていたが、拒絶反応の壁の厚さを認識させられることになった。心臓移植のブームは1969年以後急速に退潮したが、シャムウェイのグループはあきらめずに臨床研究を継続した。
心臓移植に提供される心臓は、脳死の患者から摘出しなければ役に立たない。
1980年にはシャムウェイが心臓移植に画期的な免疫抑制能を持つシクロスポリン(サイクロスポリンA)を使用して、1年生存率が80%を超える成績を収めた。

1968年、バーナードによる世界初の心臓移植の翌年、札幌医大の和田寿郎教授によって日本で初めての心臓移植が行われた。患者は83日後に死亡した。死後、ドナーの脳死判定や、レシピエントの移植適応をめぐる疑惑が指摘され、和田教授は殺人罪で告発された。札幌地検が捜査したが真相の解明には至らず、証拠不十分で不起訴となった。
この事件が招いた医療不信のために、日本では臓器移植、特に脳死移植に対する懸念が強くなり、欧米に比べて移植が進展しない大きな原因となった。脳死を前提とする心臓・肝臓移植は行われず、腎臓移植だけが、しかも肉親間の提供による生体腎臓移植を主として行われてきた。

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関連問題

雑学:1964年にミシシッピー大学病院のジェームズ・ハーディによってチンパンジーに対し初めて行われた移植手術は?
1967年世界初の心臓移植手術が行われた国はどこ?
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